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掲載日付:2022.11.07

カテゴリ:[ 医療情報  ]

久々のブログです。

医学知識は常に日進月歩で、どんなに先端知識を知っていたつもりでも1-2年後には古いものになってしまう。特に抗がん剤の領域は薬剤の登場も早く変化が速い。5年前まで前病院では血液の治療では常に新しい知識をみにつけていたつもりだったが、今はなかなか自己学習だけでは臨床が伴わないと治療センスがおいついていかないのを感じる。今は一般的な内科の診療と高齢者の血液疾患を扱い、血液疾患以外の治療にも携わっている。内科の範囲は広い。それらも昔の知識をUP DATEするために十分ではないものの

毎日ひとつ有名医学雑誌の記事を読むことを決めて続けている。私の大好きな医学雑誌はNEW ENGLAND JOURNAL OF MEDICINE。すべて仕事終えて帰ってから読むのは瞼が重くなって睡眠の誘惑に負けることもあるが、そうしたら朝おきて読む。小さいよき習慣を続けることが実りをもたらすことを信じて。そして末永く臨床が続けていけるようにするためにも、少しでも努力です。勉強しているとなぜかそれに近い疾患をもつことがあります。診断のひらめきになったりします。以前していたような記事をまた始めてみようと思いました。

掲載日付:2022.11.13

カテゴリ:[ 内科 / 医療情報  / 循環器 ]

コアグラーゼ陰性ブドウ球菌 S.lugdunensisによる感染性心内膜炎

感染性心内膜炎は細菌あるいは真菌による心臓の内膜の感染で、弁とその周囲の心内膜に炎症がおきて菌のかたまりである疣贅が作られ、そこから一部の菌塊が全身にとび塞栓症状をきたす。原因のわからない発熱の鑑別には必ず入る疾患であり、また皮疹、出血斑がでたり腎障害をきたりしたり脾臓がはれたり様々な症状のでる疾患でもある。80~90%の症例がレンサ球菌または黄色ブドウ球菌によるものである。
ブドウ球菌のうち、黄色ブドウ球菌以外の菌は、血液を凝固するコアグラーゼを分泌しないため、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)とよび、CNSは、黄色ブドウ球菌に比べて病原性の低い菌とされている。しばしば検査の際に間違ってはいりこみ検出(コンタミネーション)されたものと考えられることが多い。

ところが病変性の低いとされるコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の一種で弁破壊の強い菌がある。S.lugdunensisである。まだききなれない知名度の低い菌種で私もきいたことがなかった。でもいざ検出されると、臨床医としてはどきどきして患者を治療しなくてはならない菌なのである。
S.lugdunensisはコアグラーゼ陰性ブドウ球菌で、皮膚とくに会陰部、腋窩に多く存在する。症状としては、感染すると、皮膚、軟部組織感染症、感染性心内膜炎、骨、関節炎を起こす。感染性心内膜炎を発症するとこの菌は激しいタイプの症状を呈する。つまり弁破壊(弁が破壊されたら急激に心不全が進行する)や弁周囲の膿瘍を形成し、しばしば手術を要し死亡率も高い。ほかのCNS感染と類似しているというよりも黄色ブドウ球菌に近い性質をもつ。左室の弁に起きやすく、男性に多く、基礎疾患がある人、中年以降に多い。CNSによる心内膜炎は普通は人工弁やカテーテルなどに関連しておきるがこの菌は自然弁にもおきる。抗生物質の治療だけでは難しく弁置換を要することが多い(ブドウ球菌でによる心内膜炎では37%なのに対してS.lugdunensisでは70%) 死亡率も高い。
抗生剤は他のCNSとは異なり、メチシリン耐性株はまれで、セファゾリンなどのメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)治療に用いられる抗菌薬に対しては感受性を有する。弁周囲への広がりや心臓外への播種などにも注意して観察する必要がある。

認知度は低い菌だが、血液培養からCNSがでて、感染性心内膜炎を疑うような状況のときに、コンタミネーションと決めてかからず最後まで培養結果を確認するとともに、陽性ででたときには、弁破壊が強い菌として認識して治療にあたる必要がある菌である。

参照:Staphylococcus lugdunensis: Review of Epidemiology, Complications, and Treatment. Cureus 12(6): e8801. doi:10.7759/cureus.8801 

掲載日付:2022.11.10

カテゴリ:[ 心の言葉 ]

稲盛和夫氏の最後のインタビューの言葉

今年も社会に大きな影響をうけたかたが亡くなられた。稲盛和夫氏もその一人である。15年前に私が役職を受けた折に、どうしたらよきリーダーになっていけるか考えて手にとったのは稲盛和夫氏の著書であった。その稲盛氏の最後の長時間インタビューであったとされる86歳の時の言葉を朝礼で皆に紹介した。致知という雑誌で今月号で紹介されていたものである。

インタビュアーが<86年間歩んでこられて、人生で一番大事なものは何だと思われますか。>という質問に対して、氏は、<一つはどんな環境にいてもまじめに一所懸命にいきること。自分が自分を一つだけほめるとすればどんな逆境であろうと不平不満を言わず、慢心せず、今目の前に与えられた仕事に、それがどんな些細な仕事でも全身全霊で打ち込み努力してきたこと。もう一つは利他の心。皆を幸せにしてあげたいと強く意識し生きていくこと。>と答えられている。目の前のことを不満をいわずに精いっぱいやる。そしておごらないで他人のことを思いやる。凡人でもできることだと思いますし、それを続けることが大切だと思います。

掲載日付:2022.11.14

カテゴリ:[ 内科 / 医療情報  ]

成人での循環器合併症が生命予後に関係するアルカプトン尿症

アルカプトン尿症。ききなれない病名である。2021.2.4のNEW ENGLAND JOURNAL OF MEDICINEの写真で、手術をして組織が空気にふれると色が変わる患者さんとして紹介されている、まれな遺伝的な疾患である。小児科で学んだきりでであったことのない疾患であるが、実は調べてみると循環器的な疾患を成人になって呈することがわかる。
小児期はアルカリ化した尿が暗い褐色になり、酸性で無色になるという症状が唯一みられるものであり、20代から脊椎や第関節の関節炎を呈し、30代では色素沈着をおこす。40代になると大動脈の拡張や大動脈弁や僧帽弁の閉鎖不全がおき、40代で前立腺結石や腎結石をおこすという。成人での循環器合併症が生命予後に関係するということから40歳以降は1-2年ごとに循環器器系の定期的なチェックが必要な病気である。まれな疾患については知っているのとそうでないのとでは診断ができない。ひょっとして循環器の病院なので若い大動脈拡張の人がくるかもしれない。心にとめておきましょう。

掲載日付:2022.11.13

カテゴリ:[ 江里名誉院長 / 心の言葉 ]

大谷翔平選手のインタビューから感じたこと

大リーグに移籍して5年目の大谷翔平選手。今年もあの大リーグでまたMVPの最終候補にあがる活躍をし、本当にすごい人だとしかいいようがない。今年は自分がチームのためにやるしかないという姿があったように思う。あの若さでどうしてそのような落ち着き、目標のたてかた、実行ができるのであろう。NHK単独インタビューの放送をみて、改めて心の持ちようの非凡さを感じた。
当然昨年と同じことをしていても同じ成績はだせない。皆研究しまくり、大谷選手のデータを分析しまくるからだ。大谷選手のデータをいれれば彼のボールを投げて練習ができるピッチングマシーンまであるというからすごい。それでも彼は新しい球種を開発し進化して勝ち成績をだした。私たちだって年とっても頭を鍛えて少しでも進化し続けないといけないだと思う。
そして2刀流だからこそみえてくる、バッターでみえるものをピッチャーに生かせることがあるといっていた。これも違う役割をになってみることでみえるものがあり進化できる可能性が広がるということだ。我々の実生活にも生かせることだ。
栗山監督が大谷選手のことを、楽しみながら苦しみを超えていく、どう成長できるかが自分でも楽しみなのであろうといっていた。6歳からどうしたら野球がうまくなれるか考えていたらもっとうまくなっていただろうと大谷選手が語っていて、6歳!!!と驚いてしまった。やはり非非非凡人だ。


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