高齢者のせん妄対応で忘れていけないこと
逗子・葉山の高齢化率は高く、
葉山ハートセンターの入院患者さんの高齢化も当然高い状況となっている。
夜間当直時に、看護師さんからこんな電話がかかってくることがある。
「先生!○○さん、自己抜針とか繰り返してて目が離せなくて困っています」
「他の業務ができないんで、なんとかしてください!!」
80代男性で数日前に入院になった方が、ソワソワしているよう。
夜勤の看護師さんも数名で大勢の方をみなければいけない状況で対応に困っている。
❏当直医の対応としては?
① 夜勤の看護師さんをなだめる
➁ 患者さんをみに行く
③ 電話口で「△△△の薬を使ってください。」と、薬投与を指示する。
→当直医がみに行くと、患者さんは確かに落ち着かない様子。
バイタルサインは、BT36.9℃、BP118/74、HR88、SpO2 96%(room)
布団をはがして、診察すると。。。
下腹部だけ膨隆している。
膀胱内に尿管を留置すると、尿が3~4L排尿あり、下腹部の膨隆は改善した。
診断: 尿閉による下腹部痛
→入院などに伴うせん妄では、原因を考えることが大切。
・薬剤性(麻薬,睡眠薬,抗不安薬,抗コリン薬,抗けいれん薬,ジギタリス,H2ブロッカー,総合感冒薬など)
・感染症:尿路感染、肺炎
・代謝異常:脱水,低血糖,腎不全。電解質異常(低Na血症、高Ca血症)。肝不全(高アンモニア血症)
・中枢神経疾患:脳血管障害,髄膜炎,脳腫瘍など
・循環器疾患:うっ血性心不全、急性冠症候群、不整脈
・その他の全身疾患:貧血、悪性腫瘍
・身体的苦痛:疼痛,尿閉,発熱など
・感覚の遮断:視覚障害,聴覚障害
・環境変化:入院,個室,精神的ストレスなど
・全身的ストレス:点滴,カテーテル,手術,周囲の人の騒音など
せん妄状態になった患者さんがいたら、すぐに薬を使って鎮静するのではなく、
原因を考える事をこころがける必要がある。
葉山内科・GIM