赤身の肉を食べて食物アレルギー
先日納豆アレルギーの話をしましたがもう一つ食物アレルギーの話をひとつ。
食物アレルギーは通常暴露されて2時間くらいで症状がでるものですが、赤身の肉でおきる遅発性のアレルギーをご紹介します。
α-Gal syndrome、α-Galアレルギーと呼ばれている疾患です。galactose-α, 1,3-galactose (α-Gal)がアレルゲンであるとされていますが、これは霊長類を除く哺乳類の牛、豚、イノシシなどの細胞に存在する糖鎖です。人にはありません。これがどうしてアレルゲンになるのか。マダニにさされることが原因となるといわれています。研究ではマダニの唾液中にα―Galが証明されていて、これがダニにかまれることで、経皮的に(皮膚から)感作をうけ、発症するものと考えられています。はじめは、オーストラリアや米国での報告が多かったようですが、日本でも確認されています。
このアレルギーは、抗がん剤として使用されているセツキシマブの治験をしていたときに、アレルギー反応の頻度に地域差があることから環境要因が関係あるとではないかと調べられました。多かった地域ではα-Gal に対するIgEが高いことや赤身の肉のアレルギーが多かった、ダニにさされてなるロッキー山紅斑熱という疾患が多い地域とも重なるということがわかってこのアレルギーの研究もすすみました。セツキシマブもこのα-Galエピトープ(抗原と反応する部分)をもっています。つまりこの地域ではダニにさされたことによりα-Gal の感作をうけたかたが、セツキシマブにであってその部分のα-Galエピトープに反応してアナフィラキシーをおこしたのです。
このアレルギーの特徴は、赤身の肉(四つ足の肉)を食べてから2-6時間と少し時間があいてからアレルギー反応がおき、肉が原因だと気づかれにくいこと、また血液型でB,AB型は起こりにくいそうです。治療はアナフィラキシーがおきたときに対応できるように準備すること、牛肉、豚肉ふくめた四つ足動物の肉を食べないこと、乳製品もたつことが求められます。それにより数年かけて特異的なIgEがさがり消失しうるようです。また野外活動、仕事などでダニにさされないようにすることも大切です。
<参考>
Commins SP, Satinover SM, Hosen J, et al: Delayed anaphylaxis, angioedema, or urticaria after consumption of red meat in patients with IgE antibodies specific for galactose-alpha-1,3-galactose, J Allergy Clin Immunol, 2009; 123: 426‒433.
NEJM 2021.2.4 Clinical problem solving