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葉山ハートセンター ブログ


掲載日付:2022.11.18

カテゴリ:[ 医療情報  ]

遺伝性のがんの話

新型コロナウイルス感染症が蔓延する中、ドック、健康診断を受ける人が減り早期がんをみつける頻度が減っているという。がんには遺伝が関係するものがあり、全体の5-10%にそのような遺伝的な傾向があるという。(国立がんセンター東病院のホームページより)これらは早期発見して治療をしていくしかない。
 家族性腫瘍の代表的なものとして、責任遺伝子が明確に同定されているgroup1に分類される(1)家族性大腸腺腫症 APC遺伝子(2)多発性内分泌腫瘍症MEN2 RET遺伝子 (3)網膜芽細胞腫 RB1遺伝子(4)von Hippel-Lindou病 VHL遺伝子がある。また責任遺伝子との関連がかなりあきらかだが明確ではないGroup2 に分類されるものとして(1)遺伝性非ポリポーシス性大腸がん MSH2,MLH1,PMS1,PMS2 (2)遺伝性乳がん卵巣がん BRCA1,BRCA2 (3)Li-Fraumeni症候群 p53などがある。
 私は職員の健康にも気を配る必要があると考えて、特に血縁家族に30-40歳台での大腸がん、乳がんがあるかた、まれながんを発症している家族がいるとき、血縁親戚が同じ種類のがんが重なってある場合には、早期発見が大事なので検診をうけたほうがよいと伝えている。
 国立がんセンター東病院には家族性腫瘍外来があり遺伝カウンセリングを受けることができる。そのほかにも京大には京大病院がんセンターに家族性腫瘍ユニットが、日本医科大学付属病院にもがん遺伝子外来がある。

米国の臨床的な論文をみるととても家族歴を詳しくきいている。他民族国家であるアメリカならではなのかとも思うが、家族歴から病気の推測ができることも多い。私たちももっと家族の病気について問診に時間をかけてもいいのかもしれない。(でも患者本人が知らないことも多い)。



 参考:国立がんセンター東病院ホームページ
    四国がんセンターホームページ

掲載日付:2022.11.17

カテゴリ:[ 医療情報  ]

赤身の肉を食べて食物アレルギー

先日納豆アレルギーの話をしましたがもう一つ食物アレルギーの話をひとつ。
食物アレルギーは通常暴露されて2時間くらいで症状がでるものですが、赤身の肉でおきる遅発性のアレルギーをご紹介します。
α-Gal syndrome、α-Galアレルギーと呼ばれている疾患です。galactose-α, 1,3-galactose (α-Gal)がアレルゲンであるとされていますが、これは霊長類を除く哺乳類の牛、豚、イノシシなどの細胞に存在する糖鎖です。人にはありません。これがどうしてアレルゲンになるのか。マダニにさされることが原因となるといわれています。研究ではマダニの唾液中にα―Galが証明されていて、これがダニにかまれることで、経皮的に(皮膚から)感作をうけ、発症するものと考えられています。はじめは、オーストラリアや米国での報告が多かったようですが、日本でも確認されています。
 このアレルギーは、抗がん剤として使用されているセツキシマブの治験をしていたときに、アレルギー反応の頻度に地域差があることから環境要因が関係あるとではないかと調べられました。多かった地域ではα-Gal に対するIgEが高いことや赤身の肉のアレルギーが多かった、ダニにさされてなるロッキー山紅斑熱という疾患が多い地域とも重なるということがわかってこのアレルギーの研究もすすみました。セツキシマブもこのα-Galエピトープ(抗原と反応する部分)をもっています。つまりこの地域ではダニにさされたことによりα-Gal の感作をうけたかたが、セツキシマブにであってその部分のα-Galエピトープに反応してアナフィラキシーをおこしたのです。
 このアレルギーの特徴は、赤身の肉(四つ足の肉)を食べてから2-6時間と少し時間があいてからアレルギー反応がおき、肉が原因だと気づかれにくいこと、また血液型でB,AB型は起こりにくいそうです。治療はアナフィラキシーがおきたときに対応できるように準備すること、牛肉、豚肉ふくめた四つ足動物の肉を食べないこと、乳製品もたつことが求められます。それにより数年かけて特異的なIgEがさがり消失しうるようです。また野外活動、仕事などでダニにさされないようにすることも大切です。

<参考>
Commins SP, Satinover SM, Hosen J, et al: Delayed anaphylaxis, angioedema, or urticaria after consumption of red meat in patients with IgE antibodies specific for galactose-alpha-1,3-galactose, J Allergy Clin Immunol, 2009; 123: 426‒433.

NEJM 2021.2.4 Clinical problem solving

掲載日付:2022.11.07

カテゴリ:[ 医療情報  ]

久々のブログです。

医学知識は常に日進月歩で、どんなに先端知識を知っていたつもりでも1-2年後には古いものになってしまう。特に抗がん剤の領域は薬剤の登場も早く変化が速い。5年前まで前病院では血液の治療では常に新しい知識をみにつけていたつもりだったが、今はなかなか自己学習だけでは臨床が伴わないと治療センスがおいついていかないのを感じる。今は一般的な内科の診療と高齢者の血液疾患を扱い、血液疾患以外の治療にも携わっている。内科の範囲は広い。それらも昔の知識をUP DATEするために十分ではないものの

毎日ひとつ有名医学雑誌の記事を読むことを決めて続けている。私の大好きな医学雑誌はNEW ENGLAND JOURNAL OF MEDICINE。すべて仕事終えて帰ってから読むのは瞼が重くなって睡眠の誘惑に負けることもあるが、そうしたら朝おきて読む。小さいよき習慣を続けることが実りをもたらすことを信じて。そして末永く臨床が続けていけるようにするためにも、少しでも努力です。勉強しているとなぜかそれに近い疾患をもつことがあります。診断のひらめきになったりします。以前していたような記事をまた始めてみようと思いました。

掲載日付:2021.02.26

カテゴリ:[ 医療情報  / 江里名誉院長 ]

スマホ依存 あなたは何時間

あなたは1日何時間スマホを使用していますか。スマホアプリをかっこよく使用されている人をみるととてもうらやましいですが、私はあまり使用しません。週で平均すると1日平均15-20分程度です。やむなく院長という業務上、寝るときも枕元に置いていますが、極力使用しないようにしています。メールもスマホにしていません。でもつい早く物事を知りたくなる、相手の返事が待ちたくなる、落ち着かなくなるというのは気持ち的にもわかります。すぐググりたくなるというのが本能からきているとは・・・。
今うれている<スマホ脳>という新書。著者のハンセン氏はスマホ依存は、生存のため周囲の環境を把握し新しい情報を求めるときに脳のドーパミンがでるというのとスマホですぐに情報をえたいというのは関連があるのだという。ふーん、だったら本を次から次へ求めて読みたくなるのも同じなのか?とも思いますが。ただこのドーパミンは意欲にも関係するホルモンですが、それが快楽を感じることにつながるとなると、その快感を我慢するというのは大変であり、治すのにも時間がかかるでしょう。特にそれが生存に関係する本能からきているとすればますますです。

掲載日付:2020.10.22

カテゴリ:[ 医療情報  ]

身のまわりにも食事を我慢している人いませんか。

10月21日 NHKクローズアップ現代+はメデイカルプアをとりあげていた。このコロナ禍で病院にいくのを控えてしまう人たちがいること。それが病院にかかると怖い(薬がきれて血糖が悪くなっている人たちがいる)ならまだしも、お金が払えないから病院にもいけない。保険料が払えないから病院にいく資格がないと語ったかたの言葉にとても悲しい思いがした。ただこの番組をみたときに、これは特別な地域の話では?と思ってはいけない。ちょうどその日に私が外来でみたかたも食事量を減らしてなんとか貯金をもたせようとしているといっていた。とても具合が悪そうだった。収入が急激に減った人の中には本当に困っている人がいて当然だろう。
その番組の中では無料低額診療という制度がありおもに民医連系の診療所などが制度を導入しているという。私も病院の中にもこれを知る人はいなかった。本人の支払いを免除するなど病院が負担を強いられるが代わりに税金などで優遇されるという。徳洲会にも困っている人には支払いを猶予するという理念がある。こういう人を断ることなく医療機関は拾い上げていくことと、フードスタンプ、食事配給所などお金ではなく食事など具体的なものを提供することが必要なのではないか。身近にもそのような人がいるはずで、声をあげられずにいるはず。ばらまきでなく、本当に困っている人にこまかいところに行き届くようになるにはどうしたらいいのだろうか。


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