スタッフブログトップ ブログトップ

葉山ハートセンター ブログ


掲載日付:2023.05.20

カテゴリ:[ 内科 / 医療情報  / 血液疾患 ]

多発性骨髄腫における初回治療 ダラキューロ、ダラザレックスを用いた治療に対しての勉強会 

2023年5月20日 ダラキューロ(CD38抗体の皮下注射薬)の発売2年を記念して講演会が都内で開かれました。コロナの間は、勉強会もオンラインがほとんどで、しかもオンラインだと結局さぼってしまうことも多く知識のアップデートができていませんでした。このたび、4月から院長職もおりて心の余裕もできたところで、血液疾患をもう一度学び直しを始めています。今回の講演会は会場まで出向いて、生の講演をききました。やはりオンラインとはちがって集中力も続き、自分の知識をアップさせることができました。その内容をまとめて書きます。

骨髄腫では自家移植をおこなったほうが治療成績がよいのですが、65歳くらいまで(施設によっては70歳くらいまで)が適応であり、高齢者に多い骨髄腫では適応外になるかたも多くいます。しかし自家移植非適応の人にも今は初回治療からとてもいい治療メニューがあり、ダラキューロ(皮下注射)あるいはダラザレックス(点滴)CD38抗体を用いたメニューです。ダラキューロ+レブラミド+デキサメサゾン(DLd療法)あるいはダラキューロ+ベルケイド+メルファラン+プレドニン(D-VMP療法)がそれにあたります。その5年、6年を経過した成績が昨年の米国血液学会で発表され、どちらのメニューも長期的な成績もよいことがわかってきました。当院でもDLd療法をしているかたがいますが、そのデータによりますと平均64.5か月の観察にてPFS(無増悪生存期間)が52.1%、OS(全生存率)が66.7%と驚異的な成績です。かつては骨髄腫の平均余命は2-3年であったところからすると非常に治療成績があがったといえます。ただダラキューロは肺炎、気管支炎を合併することが多く20%程度みられること、また長期的にみると末梢神経障害が3割くらいにでてくるということでした。末梢神経障害は意識して観察していこうと思います。またDLd療法では1つのhigh risk因子だけではPFS(無増悪生存期間)は変わらないという成績がでています。

また今回の勉強会では、具体的な症例検討がなされ、現実に治療している先生から治療のコツなどを教えていただきためになりました。多くの先生がいっていたのは治療メニューを決めるのに世話をする人、家族の協力がえられるかどうか、それによる内服管理がえられるかどうかが関係しているとのこと。(たしかにそうだ!)80歳以上ではDLd療法でレブラミドを10㎎くらいに減量して行われていることが多く、80歳、90歳でもダラキューロは使えますといっていたのが印象的でした。レブラミドは腎機能が悪い人には躊躇するのですが、減量して使用し腎機能悪くても使用している先生がたが多かったです。また最初はBD療法の2剤で治療を始める先生もいました。 この治療メニューは感染症にかかりやすいため、予防投与をどうするかについては、アシクロビルとST合剤を使用している先生が多かったです。またIgG<400ではグロブリンを投与するように治験、海外ではなってきているということでした。また骨症状に対して使用するビスフォスフォネート(アレンドロン酸)は歯科受診して始めること、また治療効果がでて2年というような目安をお話しされていました。
いろいろな実臨床で参考になることが話し合われたよい会でした。

掲載日付:2022.12.21

カテゴリ:[ 内科 / 医療情報  ]

発作性に急に血圧が高くなる病気 褐色細胞腫5 治療

著明な高血圧が心筋障害,心不全,虚血性心疾患,高血圧,高血糖を生じ,脳心血管イベント発生のリスクとなるため、まず診断されたら血圧をさげるための降圧剤の開始が必要となる。降圧剤の使用にポイントがある。

第一選択薬となるのがα遮断薬である。一般の高血圧で第一選択薬になることはない薬である。
プラゾシン(ミニプレス)、ドキサゾシン(カルデナリン)という薬剤があるが作用時間が長いドキサゾシンがよく用いられる。1 ~ 2 mg/ 日から開始し,血圧が目標値まで低下するよう 2 ~ 3 日ごとに 増量していく。高齢者では起立性低血圧をきたしやすい薬剤であることに注意が必要である。
降圧不十分な場合,Ca 拮抗薬を併用する 。
頻脈・頻脈性不整脈,心筋障害,心不全,虚血性心疾患合併例でβ遮断薬を併用するがもっとも重要なこととして第一選択薬のα遮断薬より先にβ遮断薬の投与はしてはならないということである。通常α遮断薬を開始してから数日後にβ遮断薬を使用することが望ましい。
α・β遮断薬はラベタロール(トランデート )とカルベジロール(アーチスト )があるが,α遮断薬もβ遮断薬の作用もあるからいいかと思われるが、β遮断作用がα遮断作用より強く血圧上昇発作の危険がありすすめられない。
手術ができるようであれば手術が推奨される。

参考:褐色細胞腫・パラガングリオーマ 診療ガイドライン2018


掲載日付:2022.12.21

カテゴリ:[ 内科 / 医療情報  ]

発作性の高血圧をきたす疾患 褐色細胞腫 4 画像検査

臨床的に褐色細胞腫が疑われる場合はどんな画像検査をするのでしょう。
大きさ、局在、転移の検査として画像が用いられます。

● CT  もっとも最初に行われる画像検査。副腎にある腫瘍が褐色細胞腫だと断定するのは難しいが、小さい病変5mm程度の病変でも検出できる。褐色細胞腫は壊死や出血を伴うこともあり、その他の副腎がんや転移性のものと鑑別が難しい。頻度の多い副腎皮質腺腫は一般的に細胞内に脂肪成分を含有するため,腫瘍の CT 値が 10 HU 以下の場合は腺腫が第一に考えられ、褐色細胞腫ではCT値がCT 値が約 20HU以上であることが多い。褐色細胞腫は血管が豊富なため, 造影 CT を行うと、ダイナミック早期相で濃染することが多く,造影早期相(動脈相)と後期相(静脈相)をともにとると静脈相で造影剤の洗い出し(washout)がみられる 。ヨード造影剤は高血圧発作のリスクになっていて原則禁忌となっているが、造影 CT の施行時には,現在使用されている非イオン性造影剤では,昇圧発作の頻度はそれほど高くないとされる .しかし注意深い観察が必要である。

● 123I-MIBG シンチグラフィは疾患特異性が高く,褐色細胞腫・パラガングリオーマの診断に有用である.転移巣の診断にも有用であるがPETのほうがよい。
● 18F-FDG-PET は褐色細胞腫・パラガングリオーマの転移巣検索に有用である 。

参考:褐色細胞腫 パラガングリノーマ 診療ガイドライン2018


掲載日付:2022.12.21

カテゴリ:[ 内科 / 医療情報  ]

発作性の高血圧をきたす病気 褐色細胞腫3 診断のための検査

診断のためのホルモンの検査
スクリーニング検査として尿と採血で特殊な検査を行います。

● まず外来で実施可能な血中カテコールアミン分画(正常上限の 3 倍以上ないしアドレナリンとノルアドレナリンの和≧ 2,000 pg/mL これは診断精度98%),随時尿中メタネフリン分画(メタネフリン,ノルメタネフリン)(正常上限の 3 倍以上または 500 ng/mg・Cr 以上)の増加を確認します。ただし発作性の人では正常のこともあり、正常であれば否定できるわけではありません。繰り返し検査が必要です。

それが陽性だったら24時間蓄尿をして
● 24 時間尿中カテコールアミン(正常上限の 2 倍以上),24 時間尿中総メタネフリン分画(正常上限の 3 倍以上 1.8㎎/日以上 )の増加を確認します。

ただしこれらの採血、尿検査は様々なことで影響をうけて値が変わります。
できれば空腹時で少なくとも 20 分以上の安静臥床後に前腕の血管で留置針を用いて採血するのが望ましいですが外来では可能な限り安静座位とし標準的な静脈穿刺採血を行います。
カテコールアミン含有量の多い食物も値に影響を与えます。バナナ,フルーツジュース,ナッツ類,トマト,ポテト,豆類,カフェイン含有のコーヒー,チラミン含有のバニラアイス,バニラを含む菓子,チーズ,赤ワインなどの摂取を控える必要があります。(バニラ、チーズなどは知りませんでした!)また一部の薬剤(3環系抗うつ剤、レポドパ、メトクロプラミドなど)は可能な限り中止して採血を行うのがよいです。
ほとんどの降圧薬は測定に影響しないとされます。

参考: 褐色細胞腫、パラガングリオーマ 診療ガイドライン2018


掲載日付:2022.12.21

カテゴリ:[ 内科 / 医療情報  ]

発作性の高血圧をきたす病気 褐色細胞腫2 日本のデータ

さて日本ではこのまれとされる褐色細胞腫はどのくらいの患者数がいるのでしょうか。
褐色細胞腫 パラガングリノーマ診療ガイドライン2018年からのデータです。

● 平成 21 年度に実施された全国疫学調査推定患者数は良性 2,600 例,悪性 320 例である.
● 男女差なく推定発症平均年齢は 40 ~ 45 歳であるが幅広い年齢層に分布する.
● 症候性(高血圧あり)は約 65%,無症候性は約 35% で,副腎偶発腫瘍としても発見される.
● 副腎外,両側性,悪性は各々約 10%,家族歴のあるものは約 5% である

この褐色細胞腫は原因として複数の遺伝子胚細胞変異が報告されており、これらは遺伝することが示されていますが、すべての褐色細胞腫が遺伝性ではなく、弧発例(遺伝のないもの)の方が多数を占めます。MEN2型やvon Hippel Lindau病は、遺伝性褐色細胞腫を呈するものとして古くから知られていますが、近年、家族性パラガングリオーマの原因としてコハク酸脱水素酵素(SDH)サブユニットの変異が報告され、中でもSDHBは悪性度との関連が強く注目されています。MEN2型は甲状腺髄様癌・副腎褐色細胞腫・副甲状腺腫瘍のうち2つを発症した場合に診断され、RET遺伝子がその原因遺伝子と言われています。von Hippel Lindau(フォンヒッペルリンドウ)病とはVHLという遺伝子の異常により複数の腫瘍を生じる病気で、主には網膜血管腫、小脳や脊髄の血管芽腫、腎細胞癌、副腎褐色細胞腫、膵腫瘍などをおこす家族性の疾患です。褐色細胞腫がわかったときには、エコーで甲状腺や副甲状腺の検索、腎臓や頭部MRIの検査、家族の悪性疾患の病歴を確認します。



menu close

スマートフォン用メニュー