心臓病症状と治療

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狭心症主に冠動脈の異常によって心筋に一過性の酸素不足を来たすことで生じる病気です。

狭心症とは?

主に冠動脈の異常によって心筋に一過性の酸素不足を来たすことで生じる病気です。厳密には、胸痛のような症状を来たすものを狭心症、心筋の酸素不足(これを心筋虚血と呼びます)は生じているが症状のないものと無症候性(あるいは無痛性)心筋虚血と呼びます。症状がないからといって症状があるものよりも軽症だということはありません。

心臓の筋肉(心筋)は、必要な酸素はすべて冠動脈を介して供給される血流によって供給されています。心筋では正常な状態でも、冠動脈からこれ以上抽出できないほど酸素を抽出していますので、もしも心筋の酸素の需要量が増加した場合には冠動脈血流を増加させることで不足分の酸素を供給することになります(つまり、冠動脈血流からの酸素抽出率を増加させることでは酸素不足を解消することはできない)。正常の冠動脈は、必要があれば安静時の約4~5倍まで血流量を増加させることができ、これは冠血流予備能と呼ばれています。

ところが、冠動脈になんらかの異常が生じ、冠血流を増加させることができなくなったとしたら、心筋には酸素不足が生じることになります。これが心筋虚血であり、その結果生じる胸痛を狭心症と呼ぶわけです。

狭心症の種類

おおざっぱに言って、次の3つの狭心症があります。

  • 太い冠動脈の動脈硬化による狭心症=いわゆる動脈硬化性の典型的な狭心症
  • 太い冠動脈の攣縮による狭心症=冠攣縮性狭心症
  • 微小血管の調節異常による狭心症=微小血管狭心症

冠動脈の解剖

大多数の方は、冠動脈は右冠動脈と左冠動脈の計2本を有しています。うち左冠動脈は短い左主幹部のあとで前下行枝と回旋枝に分岐しています。冠動脈のこれらの部分は心臓の外側の表面を這うように位置しています。前述の「太い冠動脈」とは、この心表面に位置する我々が目で見て確認することのできる部分を指します。それらは枝分かれしながら次第に血管径を減少させ、目に見えないほどの血管に移行し、最終的には毛細血管となって心筋細胞と酸素や二酸化炭素などのやり取りをします。毛細血管に移行する直前の血管を微小血管と呼び、カテーテル検査やCT検査では微小血管を目で見て確認することはできません。

毛細血管は次第に合流し、冠静脈となって最終的に右心房に還流します。

狭心症の原因と治療

① 太い冠動脈の動脈硬化による狭心症=いわゆる動脈硬化性の典型的な狭心症

心表面の「太い」冠動脈には往々にして動脈硬化性の変化が生じます。その結果、次第に内腔が狭小化してくるわけですが、古典的な動物実験によれば、冠動脈内径の比で狭窄度が75%以上になると、前述の冠血流予備能が障害されることが示されています(狭窄度75%とは、正常の内径に対して血液が流れている部分の直径が25%であることを示します)。これが、カテーテル治療や冠動脈バイパス手術で冠動脈狭窄が75%以上の場合にその適応となる根拠です。この75%以上の狭窄を「有意狭窄」と呼んでいます。

狭窄度が75%程度では安静時には通常症状はありません。狭窄度が90%、99%と進行すると安静時にも胸痛が生じるようになってきます。

軽症であれば薬剤で治療します。薬剤で症状が消失しなかったり、複数の病変があり心機能の低下を伴っていたりするような場合には、カテーテル治療や冠動脈バイパス術のような血行再建療法を選択します。

② 太い冠動脈の攣縮による狭心症=冠攣縮性狭心症

冠動脈は決して水道管のように固いものではなく、本来はやわらかくしなやかなものです。ところが一見正常に見える部分が、あるときに異常な過剰な収縮を来たし、その結果、冠動脈に一時的に75%狭窄あるいは90%狭窄あるいは閉塞を来たすことすらあります。この現象を「攣縮(れんしゅく)」と呼びます。典型的には、夜間就寝中午前3~7時ごろに攣縮発作が生じ、胸が苦しくて目が覚めたり、悪夢をみたり、最悪突然死することすらあります。筆者の経験では、毎朝午前7時45分になったら決まって心電図上STが上昇する発作を起こした患者さんもおられました。

太い冠動脈に重大な狭窄がないにもかかわらず心電図でST上昇を記録すれば診断は確定と考えられます。必要があれば冠攣縮誘発試験と言って、ある特定の薬剤で攣縮をわざと起こさせてみる検査があります。

カルシウム拮抗薬と呼ばれる薬剤が第一選択となります。同じカルシウム拮抗薬と呼ばれる薬剤でも、薬剤によって効果に差があることがあります。なお、禁煙は必須です。また典型的な冠攣縮性狭心症の場合には、薬剤の中断は大変危険です。主治医の先生とよく相談してください。

③ 微小血管の調節異常による狭心症=微小血管狭心症

これは特に40~70歳ごろの女性にみられることの多い狭心症です。女性ホルモンの減少との関連が指摘されています。前述のように微小血管は目で見ることができません。本来は「太い」冠動脈に異常がなく、冠血流量を測定してある特定の薬剤に対して異常な血流減少反応を呈することなどから診断するべきなのでしょうが、現実には実際の臨床でそこまで検査するのは困難です。したがって、症状や年齢、性別、そして太い冠動脈に形態学的異常のないことなどから類推することがほとんどです。

厳密には冠攣縮性狭心症と微小血管狭心症を冠血流量の計測なく鑑別するのは困難です。幸いなことに、前述の冠攣縮性狭心症と微小血管狭心症には同じカルシウム拮抗薬が有効です。

検査

太い冠動脈の狭窄を目で見て確認したい場合には画像診断が用いられます。CT装置を用いた血管造影(CTアンギオ:CTA)は外来で実施します。当院では即日結果を報告することも可能です。ただしCTAでは細部を繊細に描出することはできません。ゴールドスタンダードはカテーテルと呼ばれる管状器具を血管内に挿入して実施する、選択的冠動脈造影と呼ばれる方法です。いずれの検査も造影剤を必要とし、X線被曝を伴います。

太い冠動脈を可視化するのではなく、前述の「有意狭窄」の有無を機能的に判定する方法としては、運動負荷試験、負荷心筋シンチグラム、負荷心エコー図などがあります。負荷心筋シンチグラムは同様に放射線被曝を伴います。負荷心筋シンチグラム、負荷心エコー図の負荷の方法には運動と薬物があります。運動がもっとも生理的な負荷で最善だと思われますが、運動器の障害の合併や認知症など運動負荷が困難な場合も少なくありません。その場合には薬剤による負荷で代用することがあります。

特に年齢の若い患者さんで、動脈硬化性変化のリスクの低い患者さんの場合には、X線被曝を避ける観点から可能な限りCTAや心筋シンチグラムは実施しないのを筆者の方針としております。が、一部の若年者には重大な病変も見出されることがあるため、一律な判断ではなく個別に判断する必要があるでしょう。

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