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掲載日付:2018.07.06

カテゴリ:[ 内科 / 血液疾患 ]

高齢者の造血機能(血液つくる能力)


高齢者になると貧血になることも多くなるといわれたが、そもそも血液作る能力はどうなのですかと貧血の患者さんから質問があった。

血液の細胞成分は骨髄で作られるがその大もとが造血幹細胞である。成人の造血幹細胞は細胞周期のG0期にほとんどがあり自己再生力があり、血液細胞を必要な状況になると(出血したり、大きな感染症になったりすると)細胞を再生する。幹細胞の数は年取ったマウスでは2倍になっているという。そのため個々の幹細胞の機能は年齢とともに様々な理由で低下してもトータルでは造血能力は保てるようにしているわけである。造血をする骨髄部分(椎体、腸骨、胸骨が多くなる)では年齢とともに造血細胞よりも脂肪成分が増えてくる(これを脂肪髄という)。造血する部分がまだらになるのである。しかし刺激がはいってくればそこで細胞増加する能力は保たれている。ただ造血細胞が分化(成長)して血液中にでていくためにはいろんな物質やその他の細胞に支えられるのであるが、そのサポートが少ないことが年老いた骨髄ではみられるそうだ。
また年齢とともに大きくかわるのがリンパ球への分化が減るということ。特にB細胞への分化が減るそうである。と同時に骨髄球(将来細菌と闘う好中球になる成分)系は年齢とともに増加するそうである。これは高齢者になると感染症に対して対応する場面が増えてそれに対応しやすくするためかもしれないという。(参考文献  Hematology in clinical pratice , fifth edition McGraw Hill )



赤血球はどうかというと、年齢とともに腎臓で産生されるエリスロポエチン(赤血球の造血を刺激するホルモン)が産生低下したり反応性が低下したりして赤血球の造血が低下する傾向はあるという。造血幹細胞の自己複製が低下するという説やアンドロゲンが減ることで造血能の低下がみられるという報告もある。(日医雑誌 第147巻 第4号 737-740)

掲載日付:2018.07.12

カテゴリ:[ 内科 / 血液疾患 ]

高齢者貧血の原因


私は血液内科で仕事をしてきたが、初診で貧血で紹介されたときに難しいのは高齢者の貧血である。その原因はあとで述べるが大きなカテゴリーで3つくらいあるのだが、高齢者の場合、一つの原因だけではないこと、また軽度の貧血の場合、たくさんの種類のんでいる薬剤が関係していることがあり、原因を確定するのが難しい。

高齢者の貧血の原因 大きくわけて3つ

(1)悪性疾患: 高齢者で鉄欠乏性貧血になっていたらまず消化器系の悪性疾患(胃癌や大腸がん)を疑って内視鏡検査をすすめる。

(2)慢性炎症、2次性貧血: 肺炎や結核などの感染症や膠原病に伴う慢性炎症、リウマチなどの関節炎、慢性腎障害などがあげられる。

(3)栄養障害 これが高齢者の中では見落とされがちである。高齢者では食事量が減ったり、また一人で食べるのは・・と意欲低下がみられたり、また歯が悪くて食事がとれなかったり、簡単にたべれるものをと栄養が偏ることでおきてくる。胃を切除していると鉄の吸収、VitB12の吸収が低下して鉄欠乏性貧血、VitB12欠乏性貧血をおこすが、両者が合併することもある。また胃切除では銅欠乏もおこしてくる。さらにピロリ菌がいると鉄欠乏性貧血になる人がいる。

(4)血液疾患としては高齢者では骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫が貧血の原因となる頻度が増える。

これらが互いに合併していて複雑なのである。そしてよくわからない、でも悪化もしないしよくもならない、原因不明・・・なんてこともよくある。経過をみることで答えがわかることもある。

掲載日付:2018.07.14

カテゴリ:[ 内科 / 血液疾患 ]

腎性貧血 治療目標


先日高齢者の貧血の話をしたが、その原因として腎性貧血もあげられる。年齢を経るに従い腎機能障害はどんな人でも徐々に進行するが、腎機能が低下すると赤血球の産生を刺激するホルモンであるエリスロポエチン(もともと腎臓で産生される)が十分作られないことから貧血が進行する。これが腎性貧血である。ただすべての腎障害の人が貧血になるとも限らない。クレアチニンクリアランス<30ml/minとなると急に腎性貧血になる率は高くなるとされる。中でも糖尿病性腎症の人はその比率がさらに高くなるという。(Clin Exp Nephrol 2011,15:248-257)

腎性貧血の状態が長く続くと心不全のリスクが高まり、心不全は腎臓の血管を収縮させ虚血を誘導し腎不全をさらに進行させる。Hbの濃度をあげることは生命予後の改善、血管性の発症を抑制し、も患者さんの運動時の呼吸なども楽になり全身状態もよくなる。

治療はエリスロポエチンを投与するが、だいたい治療介入時期はHb10g/dl以下 あたりとする。目標は11g/dlを基準として12以上にはしないようにする。あげすぎると血管性の病気が起きやすくなるという結果がでている。この数字は学会の出すガイドラインにより少々差がみられていて、開始基準を11g/dlとしているところ、目標を11-12g/dlとしているところもある。患者さん個人の心機能、肺機能などを考慮して決めればよいと思う。造血されるときに鉄が不足しているとエリスロポエチンを投与しても上がらないので血清鉄を気にする必要がある。またそれでも上昇しないときには、悪性疾患が隠れていたり、あるいは炎症性の疾患があったりと、高齢者の貧血の原因は一つではないこともしばしばあることを思いだして検討してみてください。

掲載日付:2018.07.18

カテゴリ:[ 内科 ]

糖尿病受診中断を防ぐために


糖尿病性腎症の重症化を防ぎ新たな透析患者を防ぐ取り組みが各医師会などで行われている。この度鎌倉医師会にて行われている取り組みをお話しいただけるというのでいってみることとした。鎌倉市の高井内科クリニックの高い昌彦先生がその概要を話された。新規の人工透析患者さんは頭打ちになりつつあるがまだ減っていないこと、そのうちわけとして糖尿病性腎症のかたが多いこと、1000万人ともいわれる糖尿病の患者さんでいかに早期に糖尿病性腎症のかたをみつけ管理していくか、尿中アルブミンを糖尿病専門家でもなかなかとっていないことなどを説明された。高井先生のクリニックでは管理栄養士さんが積極的な介入をされてそこでドロップアウトしないように工夫されているとのことであった。病院ではなかなか糖尿病の栄養管理がすべての方々に丁寧に行き届かないが、クリニックの栄養士さんは本当に工夫されていると感じた。
特別講演として、日本の糖尿病の全国研究であるJ-DOIT2(糖尿病の予防のための戦略研究:受診中断に関する研究)で中心的役割を果たされた、つくば糖尿病センター川井クリニックの山﨑勝也先生がその研究からわかったこと、一般医に対するアドバイスをお話しされた。受診中断が大事なのは、受診中断してしまった人ほど糖尿病合併症率が高いことがわかっていること。つまり透析も含めた合併症を減らすためにはその受診中断を減らし病院にかかってもらうことがまず一歩であると。研究ではわかったこととしては(1)受診中断は年8%程度。男性で仕事をもっている人に多く、若年者50歳未満、特に20-30歳代)血糖コントロールの悪いHbA1c8% 以上も多いが、かなりデータがいい人もまた多いという。過去に中断した人の再度中断する率は高い。(2)中断理由はやはり仕事が忙しいからが多いが、経済的に負担というのもある。(インスリン、複数ののみ薬では自己負担が1万円を超えるかたもいます(3)その対策としては初診のときに継続的にかかることの重要性の啓蒙、栄養指導は受診中断の減少に有効、若年者などで時間がない人に対して休日、夜間などの診療配慮(これには遠隔診療もありかと私は考えます) 薬については合剤としたりジェネリック医薬品としたりする工夫が必要。あと追い立てないような受診すすめる電話訪問。(4)一般医には、年に1回の眼科受診、足の診察、年に2-3回の尿アルブミンの検査、禁煙指導をすることがすすめられるとのことでした。
院内でもこの講義のまとめたものを他職種にも共有しました。

掲載日付:2018.07.20

カテゴリ:[ 内科 ]

逗葉内科医会 7月の勉強会 ACOについて


逗子葉山の医師会(逗葉内科医師会)の内科部門(逗葉内科医会)では月に1回 非常に実臨床に則した勉強会を開催してくださる。この7月は横浜市大医学部呼吸器病学教室教授の金子猛先生をお招きしてACO(エイコとよむ)の勉強会が行われた。

ACOとはasthma and COPD (喘息とCOPDのオーバーラップ)という概念であり2015年に提唱されたものである。持続する気流閉塞があり喘息とCOPDの両方の特性をもつというもの。つまりはCOPDとしての喫煙歴、CTにて肺の低吸収域(気腫性変化)があり拡散障害があること、慢性的な咳や痰、呼吸困難があり進行性であること、と同時に、喘息としての症状が時間とともに変化する変動性が存在したり喘息の既往、アレルギー性鼻炎や気道可逆性、末梢血好酸球増加などの要素をもつということ、その両者の特徴をもつ疾患概念。なかなか専門家でないといいきるのは難しいと思いつつも、COPDの人の中には感染を契機に喘息様の症状がでてしばらくすると安定するかたもいると感じている。

COPD単独なのか、喘息の要素があるのかどうかをはっきりさせる意義は、COPDの患者さん全員にステロイド入りの吸入がいいわけではないというデータがでてきたことがあるという。喘息の患者さんには炎症を抑えるという意味で吸入ステロイド(ICS)はキーになる大切な薬剤。ところがCOPD単独の人には吸入ステロイド+長時間作用型β2刺激薬(ICS+LABA)よりも長時間作用型抗コリン薬+長時間作用型β2刺激薬(LAMA+LABA ステロイドがはいっていない)のほうが肺炎発症率が少なくまた呼吸症状の増悪も少なくQOLがよかったという結果がメタ解析からだされたという。

また本日の講義では去痰薬、喀痰調整薬(ムコダイン、ムコフィリン、ムコソルバン)なども見直されてきているという。比較的早期に使うといいというが去痰薬の使いわけは難しいよう。ただし試して効果があれば2剤併用してもいいそうだ。

今年は喘息、COPDのガイドラインがリニューアルされると同時に,咳・痰に関するガイドラインもでるそうで、高齢化がますます進む中で一般医が知識をアップデートしておく必要のある領域だと感じます。


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