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高周波ホットバルーンによる心房細動根治治療葉山ハートセンター発祥の「高周波ホットバルーン」を詳しくお伝えします。

高周波ホットバルーンによる心房細動根治治療&EnSite mappingシステムを用いた心房細動根治治療 -それぞれの特徴と適応について-

葉山ハートセンター
不整脈センター 佐竹 修太郎

この度厚労省の新指導要綱の医師主導型の臨床研究に基づく高周波ホットバルーンカテーテルを用いた心房細動の治療を申請するに当たり、その方法、安全性と有用性について述べる。

方法

今回使用する機器:高周波ホットバルーンカテーテルと高周波発生器は、葉山ハートセンターで過去3年間(2006年5月〜2009年3月)405例に実施してきた臨床研究において使用したものと基本的に同一である。また、アブレーション方法もこれまでと同一であり、心房内にバルーンカテーテルを挿入して心房細動発生源を電気的に隔離あるいは焼灼するものである。

通常法とホットバルーンアブレーションとの違い

通 常の電極カテーテルをもちいたアブレーションでは、高周波電流は直接標的組織に流れるので、心内血流や電極の接触度などによってその焼灼深度はかわり、予 測できないため、血栓塞栓による脳梗塞や食道穿孔などの隣接臓器の障害をひきおこすことがある。高周波ホットバルーンでは、高周波電流は直接組織には流れ ず、印加されるエネルギーの大部分はバルーン内充填液を加熱するのに使われる。その結果バルーン全体が温まり、このバルーンと接触する組織が熱伝導によっ て焼灼される(湯たんぽ方式)。このときバルーン中心部から組織深部にかけてなだらかな負の温度勾配が成立する (図1)。ホットバルーンからの熱伝導による組織の焼灼深度はバルーン接触温度と高周波通電時間とに比例し、バルーン接触温度が60度のとき通電時間2分では約2mmの焼灼深度となり、通電時間が3分では約3mmの焼灼深度となる(図2)。そこであらかじめ標的部位の壁厚を計測し、温度と通電時間を設定すれば、標的組織をこえた焼灼深度とはならず、理論的には血栓や隣接臓器への障害はおこりえない(焼灼深度の予測が可能)。実際、アメリカのDr.Hainsとのブタ心臓(左心房-肺静脈)での共同実験では、明らかな血栓形成、他臓器への塞栓は無く、貫壁性の焼灼効果が得られることが判明した(図 3)。

有用性

これらの結果に基づいて3年前より葉山ハートセンターにおいて臨床研究を行い、計405名の心房細動患者様方に先述のバルーンカテーテルを用いて治療にあたった。 長期成績を確認し得た100名の患者様の治療成績(一回目の治療のみによる)は発作性心房細動では95%(通常のアブレーションでは65-80%)、持続性心房細動では80%(通常のアブレーションでは50-65%)で心房細動が消失し、より多くの患者様でQOLの改善が得られている。また、施術時間や透視時間も通常のアブレーションが各々3-5時間、40-80分なのに比し、ホットバルーンの場合は1.5-2時間、20-30分と極めて短時間で行うことができ、患者様、術者への被爆の影響も軽減されることも特筆すべき事項と思われる (文献2.3.4.5)。また通電時の食道潰瘍等の障害が懸念されたが、当院で考案したユニークな冷却方法で回避可能であることが示された(文献1.6)。

結論

以上述べたごとく、本高周波ホットバルーンカテーテルによる心房細動の治療は理論的にもまた臨床的にも安全性と有用性の高いものであります。様々なバルーンテクノロジーを用いたアブレーションカテーテルが出ては消えていく中で、われわれの論文が米国心臓病会議(AHA)学会誌:Circulation 2009年6月号(文献2:http://circep.ahajournals.org/)に掲載されたことは、通常のカテーテルによる心房細動アブレーションに限界があり、本高周波ホットバルーンカテーテルへの期待が大きいものと思われます。
これまでの臨床研究によってこのバルーンの安全性は確立されましたが、その根治率はまだ満足のいくものではありません。新臨床研究によりその有効性をさらに 高めたいと考えています。また、今後心房細動に悩んでおられる多くの患者様方を救うための治療用具として認められるように、先進医療への登録、臨床治験の開始にむけて邁進したいと思います。

2009年10月
葉山ハートセンター 不整脈センター
佐竹 修太郎

(図1)高周波ホットバルーンカテーテルの安全性、治療効果に関する基礎動物実験データ

Abstract No: C3-20
Date & Time: 2005 Dec. 16 (Fri) 17:00-18:30
The 1st. APAFS in Korea(アジア太平洋心房細動シンポジウム)
Title: Comparison in Thermal Effects Between Conventional Catheter Ablation and Radiofrequency Thermal Balloon Catheter Ablation. -A Porcine Experimental Study-

CC Epicard:通常の4mm tip カテーテルでの心外膜側温度
TBC Endocard:ホットバルーンでの心内膜側温度
TBC Epicard: ホットバルーンでの心外膜側温度

(図2)The 1st. APAFS in Korea (アジア太平洋心房細動シンポジウム)

(図3)第26回Heart Rhythm in Boston (2005年5月)

文献1)

Monitoring the esophageal temperature during hot balloon catheter ablation for atrial fibrillation to avoid asymptomatic esophageal ulcer. Circulation J. 2008;72(Suppl I):711.

文献2)

Sohara H, Satake S, et al. Feasibility of the Radiofrequency Hot Balloon Catheter for Isolation of the Posterior Left Atrium and Pulmonary Veins for the Treatment of Atrial Fibrillation.

Circ Arrhythmia Electrophysiol. 2009; 2: 225-232. Circulation Arrhythmia and Electrophysiology

文献3)

Tanaka K, Satake S, Saito S, et al. A new radiofrequency thermal balloon catheter for pulmonary vein isolation. J Am Coll Cardiol. 2001;38: 2079 - 2086.

文献4)

Satake S, Tanaka K, Saito S, Sohara H, et al. Usefulness of a new radiofrequency thermal balloon catheter for pulmonary vein isolation: a new device for treatment of atrial fibrillation. J Cardiovasc Electrophysiol. 2003;14:609 - 615.

文献5)

Hiroshi Sohara , Shutaro Satake, Hiroshi Takeda ,Yoshio Yamaguchi、Hideko Toyama, Kouichiro Kumagai, Taishi Kuwahara, Atushi Takahashi ,Tohru Ohe. Radiofrequency Hot Balloon Catheter Ablation for the Treatment of Atrial Fibrillation: A 3-Center Study in Japan.

文献6)

Hiroshi Sohara, Shyutaro Satake, Hiroshi Takeda, Yoshio Yamaguchi, Naoko Nagasu. Prevalence of Esophageal Ulceration After Atrial Fibrillation Ablation with the Hot Balloon Ablation Catheter: What is the Value of Esophageal Cooling?

J Cardiovasc Electrophysiol 2014 Jul;25(7):686-92.

EnSite マッピングシステムを併用した (左心房後壁隔離術:Box isolation)治療

現在当院ではホットバルーンアブレーションカテーテルを用いた治療を、薬事法に応じて自由診療という形で行い、1週間の入院期間で100-150万円程度かかります。週に1例程度しかできないという制約があります。この点に関して、迅速に治療を行って欲しい方、発作頻度が高い発作性心房細動の方、左心房体積(volume)が200 cc以下の持続性心房細動の方に限って以下に述べるような新しい方法で治療を行っております。通常のアブレーションカテーテルを用いた治療ですが、焼灼部位が完全に貫壁性に形成できたかどうか、焼き損ない(gap)が残っていないかを左心房後壁に留置した多電極カテーテルとコンピューターを用いて詳細に検討しています。いわば二重チェック法でgapの確認を行っていると言っても過言ではないかと思います。2本のリング状電極カテーテルを用いるのは普通の方法と同じですが、当院ではホットバルーンカテーテルによる左心房後壁隔離術(Balloon based Box isolation:文献2参照)と可能な限り同程度の広範囲にわたり左心房後壁隔離を心がけています(EnSite mapping画像参照)。

この方法により、発作性心房細動では90%、持続性心房細動の方でも80%が一回の治療で根治しています(薬剤併用も含む)。手技時間も初期では5時間かかっていましたが、現在では2-3時間もあれば終了しております。残念ながら200 ccを超えるようなヘビー級の方はホットバルーンアブレーションをお勧めしています。この方法は薬事法に抵触することもなく保険(高額医療制度)も適応できますので、比較的軽度-中等度の心房細動の方にはお勧めできます。詳しくは当センターへご連絡下さい。
当院のメルアド:mail@hayamaheart.gr.jp